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クトゥルフと帝国:クトゥルフ神話TRPGソースブックの紹介(レビュー)

クトゥルフと帝国」は大正時代の日本を遊ぶために参考になる情報、探索者の創造のための追加データ、そして3本のシナリオが収録された「クトゥルフ神話TRPG」のソースブック(サプリメント)です。

少し前に買ったまま放置していたんですが、最近ようやく遊べたので簡単に紹介しておきます。

クトゥルフと帝国

大正時代について

そもそも、大正時代とはいつなのか。日本史に疎すぎる私としてはそこからしてよくわからないわけです。

今年の5月から元号が令和になりましたが、その時に昔の元号についてもいろいろと話題になりました。なんとなく大正と明治がごっちゃになってたんですが、大正のほうが最近なんですね。言われてみれば、市役所の書類に記入する生年月日の欄、大正はあるけど明治はないですもんね。

大正時代は1912年7月から1926年12月までの15年間が該当します。すでに述べた通り明治の一つ後で、昭和の一つ前です。昭和が60年くらい続いたことを考えると15年は短く感じますが、近代の元号が特に長いだけでそれ以前は4年とか5年も多いみたいです。

クトゥルフと帝国が取り扱う時代

クトゥルフと帝国」の対応範囲……というか、主体となる時代は、1923年〜1930年くらいです。実際の大正時代とズレがあるのは、「クトゥルフ神話TRPG」の基本的な舞台の一つである1920年アメリカに合わせたというのが主な理由のようです。

1920年からではなく1923年からを主体にしているのは、1923年に関東大震災が起こったためです。「東京の様子が大震災を境にかなり変わってしまうことが大きな原因(5ページ「はじめに」より)」と説明されています。

クトゥルフと帝国が取り扱う地域

クトゥルフと帝国」は大正時代の日本を舞台としたソースブックではありますが、その主な取扱い地域は東京(当時の東京は今の東京都より狭い範囲だったようです)およびその周辺です。

とはいえ、日本の主要都市(大阪、京都、名古屋、神戸、札幌、函館、広島、福岡、長崎など)の簡単な情報も掲載されています。本当に簡単にではありますが。

クトゥルフと帝国を構成する三つの要素

大正時代の情報

クトゥルフ神話TRPG」の基本ルールブックがそうであるように、「クトゥルフと帝国」においても、ゲームの舞台となる大正日本について、様々な情報が収録されています。個人的には、「クトゥルフと帝国」の掲載情報はバランスが良いと思います。

  • 東京を中心とした日本全体の情報
  • 当時の社会情勢(政治・階級社会・教育・経済)
  • 人々の生活の様子(これがあるとロールプレイに説得力が出ますね)
  • 犯罪と法執行機関
  • 大正時代周辺の主な事件を羅列した年表
  • 日本周辺諸国に関する情報

といった感じで、ロールプレイに必要な情報、シナリオを煮詰めるのに必要な情報、それからシナリオの行間を補うための最低限の情報が網羅されていると思います。

相当リアリティに寄せるのでなければ、掲載されている情報だけでも「大正時代っぽい」セッションを楽しめます。たぶん。

探索者に関する追加データ・ルール・ガイドライン

多くのプレイヤーにとって最も関心があるのがこの要素ではないでしょうか。

大正時代の探索者をプレイするにあたって、一番現代と異なるのはそのメンタリティです。「クトゥルフと帝国」では、「帝国主義」「社会身分」「男女格差」について言及されており、これらの要素を押さえるだけでもそれらしい振る舞いができます。

といっても、現代人の感覚からするとピンとこない部分も多いところが難しくもあります。私は時代背景を意識して遊ぶのが好きなので、そういう人にはこのあたりの情報こそ有益かもしれません。

(90ページ〜91ページ)

探索者の創造

クトゥルフ神話TRPG」の基本ルールでは、キーパーはプレイヤーと相談の上、追加の職業を創造することもできると記述されています。しかし「クトゥルフと帝国」では、探索者は原則的にソースブックに掲載されている職業のリストから選択します。(もちろんキーパーによる職業の創造を絶対に認めないということはないでしょうが、あくまで基本はリストから選ぶ、ということになるみたいです)

掲載されている職業の数は29個で、「高等遊民」「奉公人」「軍将校」「女学生」など、大正らしいものも含まれています。もちろん、「私立探偵」や「古物研究家」などの「クトゥルフ神話TRPG」らしい職業もあります。職業を決めれば、探索者の社会階級が決定されます。

技能について

クトゥルフと帝国」で追加される技能はたくさんありますが、そのほとんどは武器や戦闘に関する技能です。基本ルールブックは武器の種類別にパーセンテージが別々になっていたので、これをある程度まとめたという印象です。〈日本刀〉や〈武道〉などの「クトゥルフ2010」でお馴染みの技能が多いのですが、〈銃剣〉と〈武道:相撲〉がちょっと面白かったです。

また、〈電気修理〉と〈運転:自動車〉については初期値が修正されています。

(106ページ〜111ページ)

私立探偵

クトゥルフと帝国」に掲載されている職業に「私立探偵」があるのですが、これがちょっと面白かったので個別に紹介します。

日本における探偵というと、現実の事件に関する捜査権を持つことはほぼないのですが、これは大正時代においても同様だったようです。しかし「クトゥルフと帝国」においては、フィクションにおける探偵を「私立探偵」に位置づけています。

というのも、この時代は探偵小説(現代でいうミステリー小説・推理小説)が流行し始めた時代でもあり、明智小五郎金田一耕助といった名探偵が登場した頃なのです。(知らなかった)

そういうわけで、私立探偵に関してはかなりフィクション寄りの探索者を作ることができそうです。女性の探偵も実在はしなかったようですが、作っても構わないと明記されています。

(94ページ)

シナリオ

クトゥルフと帝国」には3本のシナリオが掲載されています。私があそんだのはそのうちの一本、「浅草十二階」です。他の2つは「銀座うずまき」と「ポナペの摩人虎(マジンコ)」ですね。それぞれ「浅草」「銀座」「ポナペ島(現ポンペイ島)」が舞台です。

浅草十二階

クトゥルフと帝国」の掲載シナリオで、私が遊んだシナリオでもあります。浅草十二階というのは実在した建物の俗称で、正式名称は凌雲閣(りょううんかく)といいます。関東大震災で崩れてしまって、最終的に爆破解体されてしまった建物ですね。

シナリオの舞台はもちろん浅草で、セッション中に浅草の写真をいろいろと探してました。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/e2/Jintan_12kai.jpg

これが浅草十二階を写した、当時の葉書です。

ネタバレを避けて面白かった点は、現在放送中のアニメ「鬼滅の刃」の第7話を視聴した時に浅草十二階が映っていて「これクトゥルフでやったやつだ!!!」となったことですね。

kimetsu.com

画面にうつる凌雲閣(浅草十二階)

鬼滅の刃・第7話「鬼舞辻無慘」より

浅草十二階! じゃあここ浅草だ!  すごい浅草! 浅草がわかる!!!

となってテンション上がりました。私は高校生の頃、日本史がむちゃくちゃ苦手だったんですが、こういうことがあればもっと興味を持って勉強できたのかなーと思ってしまいます。

(ていうかこの辺まで、鬼滅の刃が大正時代の話だと気づいていなかった。原作の漫画も読んでるのに……)

クトゥルフと帝国」に限らないんですが、古い時代を「クトゥルフ神話TRPG」で遊ぶと、いろいろと知識が増えていくのも面白いところだと思います。知識があることで、ほかの創作作品の楽しみが増えますし、他の創作作品の知識を「クトゥルフ神話TRPG」のセッションに持ち込むアイディアも出てきたりしますし。

関連リンク

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