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エクリプス・フェイズ:死を克服し、それでも恐怖に晒される ホラー×SF TRPG

心はソフトウェア。     プログラムせよ。
肉体は入れ物に過ぎない。  交換せよ。
死は単なる病気だ。     治療せよ。
絶滅の危機が近づいている。 立ち向かえ。

エクリプス・フェイズは技術革新によって身体と精神を切り離すことに成功した新たな人類をプレイする、ポストアポカリプス、コンスピラシー、ホラーをテーマとしたSFTRPGです。アメリカのポストヒューマン・スタジオ社が発売しています。

この世界では、魂(エゴ)はコピー可能で、改変可能で、転送可能なものになっています。ほとんどの人は義体(モーフ)と呼ばれる人造の体(肉の体のこともあるし、機械の体のこともある。もちろん、その中間ということもある)にエゴを移植しています。したがって、極例外的なケースを除けば、エゴが死ぬということはありません。たとえばモーフごと脳が吹き飛ばされてしまったとしても、エゴのバックアップを起動して別のモーフにダウンロードすれば、あなたは行き続けることができるわけです。多少の記憶は飛びますけれども。

エクリプス・フェイズ (Role&Roll RPG)

エクリプス・フェイズ (Role&Roll RPG)

エクリプス・フェイズの世界

エクリプス・フェイズの世界は、私達が住む21世紀からかなり未来にあります。再帰的進化を行うAI、TITANs(ティターンズ)によって、人類が壊滅的な滅びを迎え、地球を捨てて太陽系に進出した事件――すなわち大崩壊(ザ・フォール)の10年後を舞台としています。

すでに紹介したとおり、人の記憶、性格、意識は魂(エゴ)と呼ばれ、デジタル化可能な情報になっています。したがって、複製を作ったり、あるいはその複製をもとのエゴに統合したり、今の体から取り出して別の体にダウンロードしたり、情報として遠隔地に転送することも、またバーチャル世界で肉体を持たずに生活することもできます。

金星や火星はテラフォーミングが進められ、また宇宙空間に作られたハビタットには数千人規模の人類が生活し、様々な文化を作り出しています。ただし、周囲を取り囲む攻撃衛星と地球進入禁止令によって、地球への侵入することはほとんど不可能です。一部の人々は地球を懐かしみ、地球由来の品は高値で取引されることさえあるのです。

非常に重厚なエクリプス・フェイズの世界ですが、ルールブックの2割弱が世界紹介に充てられています。もちろんこれは単純な世界紹介セクションの分量で、様々な物品やキャラクターのデータも世界の表現に使われていますので、全体では凄まじい分量になります。

TRPGとして遊ばずに世界紹介を読むだけでも創作欲が刺激されます。

オンラインでエクリプス・フェイズの世界を体験する

もしあなたが小説を読むなら、日本SF作家クラブの有志によって運営されている SF Prologue Wave を訪ねてみてください。ここには、エクリプス・フェイズの世界を使ったシェアワールド作品が多数投稿されています。

prologuewave.com

エクリプス・フェイズの遊びやすさ

エクリプス・フェイズの世界では、PCのうち誰か1人くらいは戦術ネットワークソフトウェアを搭載しています。これは、PC全員のメッシュ・ネットワークを接続して、周辺の地形情報、倒すべきエネミーの優先順位、戦況分析などが行われます。これがどういうことかというと、プレイヤー発言を通さずに戦闘についての情報共有ができるということです。「GM、俺のキャラクターは遭遇したエクスヒューマンの撃破優先順位をタグ付けして、戦術ネットワークを通じて共有するぜ。一番奥のやつが最優先だが、手前の足止めも必要になる」みたいな感じで、没入感を損なわずにPL間のミーティングができるのです。

各PCにはミューズという支援AIが与えられています。ミューズは優秀なナビゲーターで、PCが見落としていることを伝えたり、情報収集を行ったりしてくれます。「きみは見知らぬ人物に挨拶されるよ。ミューズによれば、彼の名前はゴンザレス時田。ハイパーコープ間での評判は上々の経営コンサルタントだ」といった具合で、GMからの補足説明をミューズを通じて行えます。

こういった「プレイヤー間で行っていたメタフィールドにおけるやり取りを、ゲーム上のやり取りに置き換えられる」工夫が至るところにあります。そのためにSF世界観がより際立つという点も面白いポイントです。

クイックスタートをチェックする

エクリプス・フェイズは CC BY-NC-SA 3.0 ライセンスで提供されているため、翻訳などを自由に行うことができます。(詳細はクリエイティブ・コモンズを参照)

英語版で提供されているクイックスタートを日本語訳したものがあるので、世界観についてもう少し詳しく知りたい人はこちらも読んでみてください。

http://prologuewave.com/wp-content/uploads/2012/05/tokuitennhenototunyuu_machikaneottojiro.pdf

基本的なルール

TRPGのルールとしてはわりかしオーソドックスな、D100を使ったパーセンテージロールです。目標値はテスト(判定のこと)に用いる技能の技能値がそのまま使用されますが、技能をもっていなくても、技能のもとになる適性の数値を使ってテストを行うことができます。技能値が上がれば決定的成功の確率も上がり、逆に致命的失敗の確率は下がっていくデザインになっていて、同じようなルールのクトゥルフ神話TRPGよりも技能値の影響が大きいと言える気がします。

またホラーSFがテーマであるため、理性値・トラウマ値・狂気値といったステータスもあります。これはキャラクターの精神的な打たれ強さを表す数値で、ホラーゲームには欠かせない要素でしょう。

世界紹介のところでも触れましたが、エクリプス・フェイズにおいては魂(エゴ)と義体(モーフ)の違いは非常に重要です。そのため、キャラクターのデータも「魂(エゴ)に由来する要素」と「義体(モーフ)に由来する要素」に分かれています。もしキャラクターが義体を交換すれば、それによってキャラクターのステータスも変動するというわけです。

エクリプス・フェイズの世界では分子レベルで物質を作ることができる技術が一般化しています。そのため、貨幣経済ではなく信用経済を採用している生活圏もあり、キャラクターの信用度が重視されます。これももちろん、ステータスとして存在し、ルール化されています。

エクリプス・フェイズの関連情報

エクリプス・フェイズの日本語版は2016年6月30日に発売されました。ベースになったのは Eclipse Phase (First Edition) のようです。英語版ではすでに Second Edition がリリースされていますが、日本語に翻訳されるのはかなり先になるような気がします。

eclipsephase.com

英語版公式ウェブサイトからは Discord のサーバー(英語のみ)に参加することができるので、英語が読めるなら参加してみるのも良いかもしれません。英語版の Eclipse Phase Second Edition は DriveThruRPG.com で PDF 版が購入できます(19ドル)。

www.drivethrurpg.com

日本語版は Amazon で購入できます。発売が2016年なので、もしかしたら書店には置いてないかもしれない……? とはいえ、取り寄せは可能だと思いますので、贔屓の本屋さんがある人はそちらで購入したほうが良いでしょう。

エクリプス・フェイズ (Role&Roll RPG)

エクリプス・フェイズ (Role&Roll RPG)

 エクリプス・フェイズの日本でのサポートは Role & Roll で行われています。

r-r.arclight.co.jp

シナリオも頻繁に掲載されていますので、自作するのが大変という人は Role & Roll の購入も検討してみてください。(アークライトのウェブサイトで目次を確認すれば、エクリプス・フェイズのシナリオやサポートが掲載されているかどうか確認することができます)

サプリメント「サンワード」

現在、エクリプス・フェイズのサプリメントの一つ「サンワード」が翻訳中で、2020年の前半に出したいようです。(監訳者である朱鷺田祐介さんのブログで言及されていました)

suzakugames.cocolog-nifty.com

サンワードは太陽系内惑星圏……太陽コロナにあるハビタットを始めとして、金星、月、火星などの詳細な背景について記述されているそうです。発売したらまた紹介記事を書きたいと思っています。