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クトゥルフ2020:現代日本をプレイするための新クトゥルフ神話TRPG向けソースブック

2020年6月末日、クトゥルフ2020が発売されました。だいたい4000円くらいで購入できます。

新クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2020 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

現代日本で新クトゥルフ神話TRPGをプレイするために持っておいてもそこまで損はないような気がするソースブック(サプリメント)です。個人的には無理して購入するほどだとは思えませんが、買って損をする内容かというとそんなことはありません。

ちなみにルールブックを持っていない人はまずそちらを購入しましょう。

新クトゥルフ神話TRPG(第七版):遊びやすくなった最新版で宇宙的恐怖を堪能する

余談ですが、クトゥルフ2010、クトゥルフ2015も「現代日本」がテーマなのですが、5年毎とはいえ現代日本象も大きく変わっていくわけなので、素直に「2020年代の日本を舞台に」と言ったほうがいいのでは。

以下内容の紹介ですが、実際とは異なる順番で紹介しています。

現代日本の探索者を作る

職業

現代日本の職業について解説され、職業技能や信用の範囲が定義されています。使わない人は使わないと思います。「クトゥルフ2020の職業から好きなものを選んで探索者を作ってください」みたいな使い方はありそう。(私は都度職業技能を定義するので、使わない派です)

クトゥルフ神話TRPGに掲載されている信用と所持金のレートがアメリカドルなので、クトゥルフ2020には日本円のものが掲載されています。が、単純に変換しただけのもので、日米の経済事情の違いが考慮されたものではないので、「見やすいね」くらいです。この表のためにクトゥルフ2020を購入するのはやめましょう。

バックストーリー

現代日本にふさわしいバックストーリーのリストです。新クトゥルフ神話TRPGのルールブックに掲載されているリストの現代日本版で、ちょいちょい面白いものが混ざってます。「重要な人:推し」とか、「特徴:役に立たない驚くべき特技(炭酸飲料の一気飲み)」とか。

探索者の経験

特別な経験を持つ探索者を作るための追加ルールです。

例えば「クトゥルフ神話の事象に関わった過去を持つ」や「大規模な災害に遭った事がある」といった経験を持つ探索者を作るためのルールです。用意されたパッケージの中から選択し、その効果を適用するだけで良いというもので、探索者に個性を与えることができます。

個人的には「ドリームランドを訪れたことのある探索者が作れる(〈夢見〉技能についての解説もある)」点が非常に良かったです。また、このパッケージ式のオプションを探索者に与えるルールは、キャンペーンセッティングとしても使いやすいのではないかなと思います。

年少探索者の創造

7歳〜14歳までの年少探索者の創造のための追加ルールです。面白いルールだと思いました。

年少探索者は通常の探索者とは違い、他の探索者を支援する能力を持っています。代わりに、年少者にふさわしく、そう高い技能値を得ることができなくなっています。クトゥルフ2010に掲載されていたルールとは全く異なり、かつ面白いものに仕上がっていると思いました。

加えて、年少探索者をプレイする際のプレイヤー向けガイドライン、またシナリオの作成に関するガイドラインも掲載されています。年少探索者で遊ぶ際は是非クトゥルフ2020の該当箇所を読んでおくことをおすすめします。

この追加ルールの本質はプレイの際のガイドラインであると思います。

事前に創造した探索者について

プレイヤーが事前に作ったやたら強い探索者や、他のグループでプレイした探索者を持ち込んできた場合などに、キーパーとしてどう対応するのかというガイドラインが書かれています。

非常に有用です。

有用なんですが、「現代日本を舞台としたセッション」のセクションに含まれているのはちょっとよくわからないです。現代日本のプレイ事情を踏まえたガイドラインと言ったほうが正しい。舞台が1920年アメリカでもこの問題は発生します。

ニコニコのクトゥルフチャンネルや Role & Roll のアーカム計画など、こういった「現代日本のプレイ事情」を踏まえたガイドラインを掲載する場はたくさんあるはずなのに、クトゥルフ2020に盛り込まれているのはちょっと不親切ではないかなと思います。

掲載することは良いことです。ただ、繰り返しになりますが「現代日本を舞台にするためのキーパーガイド」のセクションに含まれる内容ではないです。(いろいろ大人の事情があってここに含まれているんだろうな……)

※ この情報、もしかしたら Role & Roll に掲載されているかもしれないです。私がもっている号にないだけで。

キーパー向けのガイドライン、情報

トーンとテーマの取り扱い

クトゥルフ神話TRPGルールブック181ページに掲載されている「ゲームをプレイする準備 » トーンを決める」セクションの補足です。ざっくりいうと、「現代日本を舞台にしていても、様々なトーンがある」ということが書いてあります。

それに加えて、シナリオやセッションで取り扱うテーマの選定と、その際に注意すべきことについてのガイドラインも掲載されています。ルールブックにかかれている範囲はもちろん、それに加えて「現代を舞台にする故の注意点」が付け加えられているため、こちらについては非常に有用です。

例えば近年の震災をテーマにする時、プレイヤーに直接の被災者がいないとは限りません。これがもし数百年前の災害ならば、プレイヤーの中に直接の被災者がいる可能性は低いわけですが、現代がテーマである限り配慮は必要です。あらゆる犯罪、事件、思想がシナリオのテーマになる可能性がありますが、同時に、そのテーマを扱うことそのものがプレイヤー本人に強い影響を与えすぎることもありえるわけです。

戦闘にまつわる補足

クトゥルフ神話TRPGの舞台は原則的にアメリカです。旧版のクトゥルフ神話TRPGの紹介記事を書いた際にも言及したのですが、要するに探索者が火器を入手することが可能な舞台を前提とされているわけです。しかしながら現代日本においては、火器どころかナイフ一本手に入れるのにも一般人にとっては困難です。(ファイティングナイフなんてどこに売ってるんだ?)

必然的に、アメリカを舞台とした探索者に比べて、現代日本を舞台にした探索者は攻撃能力の面で大きく劣ることになります。この点は大きなバランス調整が求められるポイントですし、現代日本で遊ぶ際に最も不都合な点でしょう。

クトゥルフ2020には戦闘に関するバランス調整のガイドラインが掲載されています。具体的には、どれくらいのダメージが探索者にとって危険な水準になるのか、そしてバランス調整のポイントとしてどういったやり方が考えられるのかが解説されています。

現実世界およびクトゥルフ神話世界の年表

めっちゃ役に立ちます

現実に起こった出来事のうち、クトゥルフ神話TRPGのシナリオに関わりそうな出来事、そしてクトゥルフ神話世界における出来事を整理した年表です(ただし近代のみ)。新クトゥルフ神話TRPGのルールブックには掲載されていない内容なので、純粋に補足情報ということでしょうか。

地質年代規模の年表もあります。

シナリオグラム

ランダム表を使ってシナリオを作成できるツール、シナリオグラムも盛り込まれています。単に表をコロコロして作るということではなく、シナリオの膨らませ方などについても言及されています。

さらに、シナリオ作成時・プレイ時に使える様々なシートも添付されています。別にシナリオグラム使わないとしても役に立つ代物です。

掲載シナリオ

クトゥルフ2020のページ数の半分がシナリオに割かれています。掲載シナリオは6つ。うち2つは Role & Roll に過去掲載されていたシナリオのようです。未プレイですので、タイトルのみ紹介しておきます。

  • 黒い目玉
  • ツチクワの嫁
  • 私には止められない
  • 世界を見た男
  • 眠らぬ街の白い顔たち
  • 公園の侵略者

クトゥルフ2020は買うべき?

必携書ではないが、役に立ちます

クトゥルフ2020に掲載されている「現代日本プレイヤーのためのマナー」に相当する記述は、ほとんど基本ルールブックに書かれていることの補足ではありますが、それでも便利な要約として役に立ちます。インターネットでプレイヤーを探す際、クトゥルフ2020を所持していることを条件とする募集は増えるかもしれません。

個人的に嬉しかったのは「探索者のパッケージ」と「年少探索者」の追加ルールですね。特に年少探索者はクトゥルフ2010に掲載されていたものから大幅にアップデートされ、良くなっています。

シナリオが欲しい人、追加ルールに興味がある人は、是非購入をおすすめします。